このたびの令和8年8月千葉豪雨により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災された事業者の方は、まず県・国の特別相談窓口をご利用ください。支援窓口を見る
2026年8月13日の夜。千葉に、8月ひと月分の3倍の雨が降った。
2026年8月13日の夕方、千葉県の上空で線状降水帯が発生しました。千葉市の24時間降水量は360ミリを超え、観測史上1位を更新しました(気象庁)。気象庁はレベル5の大雨特別警報を発表し、この豪雨を「令和8年8月千葉豪雨」と命名しました。災害救助法は県内25の市町(21市4町)に適用されました。
建物が浸からなかった会社でも、事業は止まりました。従業員が帰れない。車が水没した。道路が塞がれ、翌朝の出勤も配送も立たなかった。「被害ゼロ」と「事業継続」は、別の問題でした。
そして千葉は、これが初めてではありません。2019年9月、房総半島台風は最大で約93万4,900戸の停電を県内にもたらしました(内閣府・2019年9月13日時点の速報)。風の次は、水。次が何であっても止まらない仕組み。それがBCPです。
千葉のリスクは、住所で違う
千葉県のリスクは、一枚の地図では描けません。湾岸と外房と南房総では、「止まり方」がまったく違うからです。まず、あなたの事業所がどの停止像にあるかを確かめてください。
| あなたの拠点 | 想定される停止像 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 東京湾岸・県北西部(浦安〜千葉〜市原〜袖ケ浦) | 千葉県北西部直下地震(Mw7.3)。全壊・焼失約7.6万棟、断水人口約257万人、停電率約53%、直接被害約9.5兆円(県・2026年5月想定・冬18時の条件)。液状化、京葉臨海の保安、港湾と都内取引先の同時停止。 | 建物・地盤・タンク配管・電気室・港・道路・従業員・顧客のどこが、同時に止まるか。 |
| 成田・印旛・北東部 | 空港直下地震、豪雨水害。空港が動いても、アクセス・貨物上屋・通関・トラック・参集が止まれば貨物は動かない。空港全体のBCPは48事業者の連携で、アクセス喪失時に24時間以内の代替輸送確保などを目標としている。 | 滑走路の再開と、自社の貨物と人の流れの再開は、別の条件。 |
| 外房・九十九里 | 房総半島東方沖地震(Mw8.5)。最大津波水位と到達時間は、いすみ12.8m・21分、御宿11.5m・22分、勝浦10.6m・20分、銚子12.5m・43分など(条件付き推計)。 | 設備より先に、従業員と来訪者が何分で避難を開始できるか。 |
| 内房・南房総 | 2019年台風15号型。広域停電、断水、通信途絶、倒木、道路寸断の長期化。 | 発電機だけでなく、水・燃料・通信・修理人員・道路を何日維持できるか。 |
| 利根川などの低地・中小河川流域 | 県は水防法上の対象211河川すべてで、想定最大規模降雨の浸水想定を公表している。河川によっては浸水深50cm以上の継続時間や、家屋倒壊等氾濫想定区域も確認できる。 | 事業所・倉庫・従業員宅・配送路の、住所別の浸水深・継続時間・代替経路。 |
ハザードマップの確認は出発点です。ただし浸水想定区域図は、河川ごとの想定最大規模降雨に基づく推計です。県自身が、内水・支川・排水施設の状況や高潮は別途の確認が必要だとしています。区域の中は地図で備え、区域の外や地図にない停止は「それでも止まらない仕組み」で備える。両方が必要です。
地震・津波の数値は千葉県地震被害想定調査結果(2026年5月)による。発生時期・気象・潮位・避難行動などの条件付き推計であり、個別の施設の被害を確定するものではない。
無傷でも、止まる
2026年8月、蘇我駅
JR蘇我駅の周辺では約4,000人の帰宅困難者が発生し、県の輸送力だけでは対応が難しく、県は翌14日の未明に自衛隊へ災害派遣を要請しました(内閣府・8月31日時点)。社屋が浸からなくても、人が帰れなければ、来られなければ、翌日の事業は止まります。
2019年9月、成田空港
台風15号で、滑走路やターミナルに大きな被害はありませんでした。しかし鉄道の運休と高速道路の通行止めでアクセスが途絶え、空港に人が滞留しました。施設の無事と、機能の維持は別物です。
2019年9月、断水の仕組み
最大13万7,954戸の断水の背景には、浄水場などの停電がありました(内閣府・2019年9月13日時点の速報)。水道管が無事でも、電気が止まれば水は止まります。停止は連鎖します。
京葉臨海と、全国への供給責任
千葉市から富津市にかけての京葉臨海コンビナートは、原油処理・エチレン・粗鋼・LNG貯蔵能力がいずれも全国1位です。製造品出荷額は県全体の49.1%を占めます(県資料)。ここが止まると、止まるのは千葉ではなく、全国の燃料と素材の供給です。臨海部に自社がなくても、仕入れ、燃料、電力を通じて、全員が当事者になります。
BCPとは「災害で壊れた会社を直す計画」ではありません。壊れていないのに止まった会社を、動かし続ける計画です。千葉県はこの7年で、そのことを2度、県全体で経験しました。
二つの読者へ
まだ策定していない方へ
千葉県内411社の回答では、BCPを策定済みの企業は19.7%。5社に4社は、まだ持っていません(帝国データバンク・2026年5月調査。県内677社を対象、回答率60.7%。回答企業の割合であり、県内全事業所の率ではありません)。
一方で、「策定中・検討中」を含む策定意向は50.8%。最も多いのは「必要だと思っているが、まだ形になっていない」会社です。
全国調査で、策定していない理由の上位は「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%、「時間を確保できない」28.1%です(帝国データバンク・2026年全国調査)。意識の問題ではなく、リソースの問題。ならば、リソースを補う道具で解決できます。
令和8年8月豪雨で被災された方へ。まず特別相談窓口と災害復旧貸付をご確認ください。支援窓口を見る 復旧の道筋がついたら、その経験こそが、最良のBCPの出発点になります。
策定済みだが、動かせるか不安な方へ
8月13日の夜、あなたの会社のBCPは機能しましたか。安否確認は回りましたか。帰宅困難になった従業員への指示は、決まっていましたか。
国の事業継続力強化計画の認定は、県内で累計3,900件を超えています(2026年7月時点)。しかし策定と認定は入口です。中小企業庁自身が、認定後の訓練と見直しを実効性の条件としています。
千葉で点検すべき問いは三つです。浸水想定区域の「外」にある拠点にも、水害時の手順があるか。従業員が帰れない夜の、宿泊・指揮・翌朝の判断基準があるか。停電が3日続いたときの、水・燃料・通信の手当てがあるか。
支援窓口
被災された方は、まず特別相談窓口へ。これから備える方は、県の無料セミナーとBCP-AIを併用してください。
| 支援先 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 令和8年8月豪雨・特別相談窓口 | 千葉県産業振興センター「チャレンジ企業支援センター」に経営・金融の相談窓口(8月14日設置)。県内各商工会議所、県商工会連合会、県中小企業団体中央会、よろず支援拠点、信用保証協会でも対応 | 千葉県産業振興センター |
| 国の被災事業者支援 | 災害救助法の適用(21市4町)を受け、日本政策金融公庫・商工中金の災害復旧貸付、信用保証の特例、特別相談窓口 | 経済産業省・2026年8月14日発表 |
| 千葉県産業振興センター(平時) | 事業継続の無料相談、BCP策定支援、商工会・商工会議所と連携した県内各地のセミナー | 千葉市美浜区中瀬 |
| 千葉県(商工労働部) | 事業継続力強化計画の策定支援セミナーを定期的に開催。県・産業振興センター・民間の共催で、短時間で下書きまで到達する形式 | 県公式「中小企業の危機管理対策の推進」 |
| 千葉県商工会連合会 | 小規模事業者向けの事業継続力強化計画・BCPオンラインセミナー | 開催実績あり |
| 事業継続力強化計画(国の認定制度) | 防災・減災の事前対策を国が認定。税制優遇、金融支援、補助金の加点。県内累計3,900件超(2026年7月時点) | 中小企業庁。認定後の訓練・見直し支援あり |
次の災害は、風か、水か、揺れか、わかりません。わかっているのは、千葉では「次」が来ることだけです。