2018年7月7日、肱川があふれた。
大洲では約4,000棟の家と事業所が水に浸かり、市の半分で水道が止まった。
愛媛県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
肱川は大洲第二観測所で、観測史上最大の8.11mを記録しました。野村ダムと鹿野川ダムは緊急放流。大洲市では約4,000棟の家屋と事業所が浸水し、市内のおよそ半数の世帯で水道が止まりました。宇和島市吉田町では浄水場そのものが土石流で被災し、断水が長期化。予讃線と予土線が被災し、県内各地で道路が寸断されました。
柑橘の園地、選果場、商店、工場。被害は「建物」で終わらず、水、道路、出荷、雇用、資金繰りへ広がり、復旧は年単位になりました。
そして2026年2月、県は13年ぶりに地震の被害想定を更新しました。県はもう、揺れの強さだけでなく、断水、停電、道路、港湾が「何日止まるか」まで計算しています。
まだ計算されていないのは、あなたの会社の分だけです。
一つの県に、三つの止まり方
地震・津波 —— 13年ぶりに更新された数字
2026年2月16日、県は南海トラフ巨大地震、安芸灘〜伊予灘〜豊後水道のプレート内地震、中央構造線断層帯を対象とする新しい被害想定を公表しました。南海トラフ巨大地震では、死者は最大1万2,750人(災害関連死を除く)、今回初めて推計された災害関連死は最大3,602人、建物の全壊・焼失は12万6,325棟です。
前回(2013年)の想定と比べると、震度6強以上の面積は縮小し、全壊は半減しました。減った理由は偶然ではありません。耐震化率は71.4%から86.4%へ上がり、県民アンケートで「揺れたら直後に避難する」と答えた人は45.6%と、国の想定が前提とする20%を大きく上回りました。数字が減ったのは、備えが進んだ分だけです。あなたの会社の分は、この数字に入っていますか。
新想定は、建物と人的被害だけではありません。上水道、下水道、停電、通信、ガス、道路、鉄道、港湾、漁港、医療介護、農地、観光、経済被害まで一体で推計しています。県はすでに、「事業がどう止まるか」まで計算しているということです。
海だけではない。二系統の地震リスク
四国北岸を貫く中央構造線断層帯——全長約444kmに及ぶ日本最大級で、国内で最も活動的とされる断層系——が、瀬戸内側の工業地帯(新居浜、西条、今治、四国中央)の足元を走っています。国の長期評価では、県内を通る石鎚山脈北縁西部区間はSランク(今後30年以内の発生可能性が、我が国の主な活断層の中で高いグループ)で、想定はM7.5程度。西側の伊予灘区間が動けば、M8.0程度もしくはそれ以上と推定されています。
海の巨大地震は、津波、広域被災、段階的な復旧。陸の直下型は、局所的な激震と即時の停止。復旧の曲線が違います。2001年の芸予地震(M6.7)は、「瀬戸内側は揺れない」の反証として、県内の記憶に残っています。愛媛の企業は、二系統の地震リスクを前提にBCPを組む必要があります。
県内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 中央構造線断層帯 石鎚山脈北縁西部区間(マグニチュード7.5程度)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る安芸灘断層帯は広島県・山口県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「愛媛県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
豪雨・土砂 —— 2018年に起きたこと
宇和島市では、7月5日から8日の降水量が381.5mm。柑橘園地、商店、工場が被災し、吉田町では1時間最大74mm、総雨量434mmの雨で浄水場が被災し、断水が長期化しました。大洲市では肱川が観測史上最大の8.11m。西予市野村町では、野村ダムで1時間最大89mm、総雨量633mmを記録し、緊急放流ののちに氾濫しました。宇和観測所では、24時間と48時間の降水量が観測史上1位を更新しています。
「観測史上1位」が、複数の地点で同時に更新された。過去の経験則が通用しない降り方でした。中予も無縁ではありません。松山市の高浜地区では、土砂崩れが相次ぎました。
三つの経済圏で、止まり方が違う
| 経済圏 | 主な停止経路 | 実例 |
|---|---|---|
| 東予(新居浜・西条・今治・四国中央)製造・素材・港湾 | 地震動、液状化、停電、工業用水、港湾岸壁、部品物流 | 中央構造線Sランク区間の直下。2001年芸予地震の実被害 |
| 中予(松山)都市機能・サービス | 断水、通勤途絶、通信・決済、顧客減 | 2018年高浜の土砂崩れ |
| 南予(宇和島・大洲・西予・八幡浜)農水・食品・観光 | 豪雨、土砂、農地、冷蔵、選果、道路、需要減 | 2018年の実被害そのもの |
県平均のリスクに備える会社はありません。あなたの住所と取引先の住所で、止まり方は決まっています。
自社が無傷でも、事業は止まる —— 2018年の実話で
水が止まった事業所は、被災していない
大洲市で断水したのは、市内のおよそ半数の世帯です。浸水を免れた店舗、工場、介護施設も、水が来ない間は営業も生産も衛生管理もできませんでした。吉田町では、浄水場という「一つの点」の被災が、町全体の蛇口を止めました。自社の耐震補強では防げない停止です。
道が切れた先の取引先も、被災していない
予讃線と予土線の被災、県内広範囲の道路寸断。原材料、出荷、従業員、修理業者——「来ない」ことによる停止は、建物の無事と無関係に起こります。
売上は、被災地の外でも止まった
県が豪雨後にまとめた復旧支援の枠組みには、金融、雇用、農林水産と並んで「地域需要・観光の回復」が含まれました。支援のメニューにそれが必要だったこと自体が、直接被災していない事業者の売上も止まった証拠です。
次の災害でも、最初に来る問いは同じ
県の2026年想定は、断水、停電、通信、道路、港湾、漁港の復旧まで推計しています。次の災害でも、最初に来る問いは「建物は無事か」ではなく、「水・電気・道・人はいつ戻るか」です。
BCPとは、避難計画ではありません。水、電気、道路、取引先が戻る順番を、先に決めておく計画です。
二つの読者へ
まだ策定していない会社へ
帝国データバンク松山支店の2026年調査(5月・県内355社対象・128社回答)では、県内企業のBCP策定率は21.9%、未策定は33.6%。全国平均の21.4%並みですが、中小企業に限ると16.7%。約6社に1社です。
策定しない理由の核心は、意識ではなく資源です。スキル、人材、時間の不足。だからこそ、ゼロから自力で書く前提を捨ててください。AIが下書きを作り、あなたは自社の事実(住所、取引先、設備、在庫日数)を確認する側に回る。
2018年の教訓を一行にすれば、こうです。豪雨のあと、資金繰り、雇用、農地、道路の支援制度は動きました。しかし支援は、「再開の設計図がある会社」から順に効きました。
「うちは南予じゃない」「沿岸じゃない」。そう思った方は、三つの経済圏の表と、中央構造線の段落に戻ってください。
21.9%は回答128社の割合であり、県内全企業の推計ではありません。
策定済み・策定中の会社へ
策定率は前年から1.9ポイント下がりました。策定済みでも、更新が止まれば「策定済み」から脱落します。計画は在庫と同じで、棚卸しされないと数字から消えます。
問いは三つです。2026年2月の新想定(断水・道路の復旧日数の更新)を計画に反映しましたか。取引先と従業員の自宅の住所で見直しましたか。最後に訓練したのは、いつですか。
策定意向のある会社は57.8%(前年比+4.7ポイント)。「作るつもり」の会社が増えている今こそ、取引先から計画の有無を聞かれる側になる前に。
愛媛の支援環境
愛媛県BCPステップアップ・ガイド。県独自の段階式マニュアルです(NPO法人事業継続推進機構の協力・3部構成)。県が入口を用意している県です。BCP-AIで作った初版を、その先の自社固有の中身を埋める下敷きにできます。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)。県内の累計認定は1,100件を超えています(令和8年7月末時点)。認定により、金融支援、税制措置、補助金審査上の加点があります。
事業継続力強化支援計画。県が商工会・商工会議所の支援計画を認定・公表しています。身近な商工会議所(西条商工会議所などにセミナー実績)が相談窓口になります。
中小機構四国本部。専門家派遣によるジギョケイ策定支援(無料)。
BCP-AIは公的支援と競合しません。公的制度に出す前の、自社の事実整理と初版づくりに使えます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
肱川の水位も、吉田町の断水も、もう「想定外」ではありません。次に来るものは、県がすでに数字にしています。あなたの会社の数字にするのが、BCPです。
2026年の新想定を受けて、各市町の防災計画の改定が進んでいます。取引先と金融機関がBCPを聞く頻度が上がる年です。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。