あの日から15年。福島の会社は「建物が無事でも、会社は止まる」を、身をもって知っている。
福島県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2011年3月11日、マグニチュード9.0。福島県は、地震と津波に、その後の長期にわたる避難と立入制限が重なる複合災害となりました。災害は、揺れが収まったあとも、人と会社を止め続けました。
その後も、止まりませんでした。2019年10月、東日本台風で阿武隈川流域が戦後最大級の洪水になりました。2021年2月13日と2022年3月16日には、13か月の間隔で2度、福島県沖を震源とする震度6強。2022年の地震では東北新幹線が脱線し、東京電力・東北電力の管内で最大223万戸が停電しました。
15年の間に、福島の会社は「止まり方」を、いくつもの種類で経験してきました。揺れで、津波で、立入制限で、水で、停電で、道路で、取引先の事情で。この県のBCP策定率23.0%は、全国平均の21.4%より高い水準です。
問題は、次の一歩です。その計画は、2019年の水害で開かれましたか。2022年の深夜の揺れで、機能しましたか。計画は、作った日ではなく、最後に見直した日の分しか会社を守りません。
三つの地域に、三つの停止経路
浜通り、中通り、会津。福島は、止まる理由が地域でまったく違う県です。県平均のリスク一覧ではなく、あなたの事業所がどの経路で止まるかを見てください。
浜通り —— 地震・津波は「また」来た。11年後に、2度
東日本大震災で、福島県の死者は県の集計で4,182人。うち2,351人は、揺れや津波のあとに亡くなった震災関連死です。亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。
2021年2月(M7.3)と2022年3月(M7.4)。ともに福島県沖、ともに震度6強。相馬、南相馬、国見では、復旧したばかりの施設が再び被災した事例が相次ぎました。2022年の地震では断水が最大約7万戸(岩手から千葉までの5県計)、県沿岸には津波注意報。「一度来たから当分ない」は、この海には通用しないことを、県自身が実証しています。2023年9月には県内で初めて線状降水帯が発生し、いわき市を中心に床上浸水が1,264棟に及びました。
県の津波浸水想定(最大クラス)と、事業所・従業員宅・経路を住所単位で照合することが、実務の出発点です。
中通り —— 阿武隈川は、県民の半分以上の足元を流れている
2019年の東日本台風では、阿武隈川流域の平均で253mmの記録的な降雨により、戦後最大だった昭和61年の8.5水害を上回る規模の洪水になりました。基準観測所10か所のうち9か所で既往最高水位を記録し、本宮、郡山(阿久津)、須賀川では計画高水位を超えました。
郡山市では建物被害が1万1千件。阿武隈川と谷田川に挟まれた中央工業団地などでは、事業所や工場が最大4m近くまで浸水しました。
県の資料が明記するとおり、県民の半分以上が阿武隈川流域に住んでいます。中通りの事業所は、自社、従業員の自宅、仕入先、配送経路の4点を、洪水ハザードで重ねる必要があります。
会津 —— 雪は毎年来る「予定された停止」
会津と山間部では、冬季の道路、鉄道、配送、通勤が毎年制約されます。地震(会津盆地東縁断層帯は、県の被害想定でM7.7を想定)と雪が重なれば、復旧も除雪も、どちらも遅れます。
「大雪の日に誰が出勤し、何を止め、顧客に何と言うか」は、災害BCPより先に毎冬使う実用ルールです。最初の1枚として、いちばん作りやすい。
三地域共通 —— 電気・水・交通は、県外の事情でも止まる
2022年3月の地震では、県内の被害に加えて、首都圏を含む1都8県で停電が起きました。逆に、県外の発電、物流、取引先の停止が県内の企業を止める経路もあります。
県の地震・津波被害想定(福島盆地西縁断層帯M7.8、会津盆地東縁断層帯M7.7、想定東北地方太平洋沖地震M9.0など)で、自社の住所の震度と浸水を確認してください。
建物が無事でも、福島の会社は止まった —— 三つの実録
公的記録と報道事実だけで組んでいます。企業名は業種で表記します。
2019年10月、郡山中央工業団地 —— 33年を挟んで、同じ団地が2度沈んだ
阿武隈川の氾濫で団地の大部分が冠水し、事業所や工場では最高4メートル近くまで水に浸かりました。この団地は1986年の8.5水害でも浸水しており、同じ団地が、33年を挟んで2度沈みました。郡山市内の被害額625億円のうち、8割余りがこの団地に集中しています。
「過去最大に備える」と「過去最大を超えられたら何を守るか」は、別の問いです。後者を決めるのがBCPです。
2019年10月、浜通り北部 —— 建物も設備も無傷。それでも工場は止まった
浜通り北部のある重工業メーカーの2工場は、建物にも設備にも破損がありませんでした。それでも市内全域の断水で、稼働を停止しました。いわき市では浸水と停電・断水で、車載部品の工場が復旧に約10日。伊達市でも、電子部品の工場が浸水で止まりました。
水は「生産設備」であると同時に、「衛生・トイレ・従業員の生活」です。給水系統がどこから来ているかを知らない会社は、止まる理由を一つ多く抱えています。
2022年3月、深夜23時36分 —— 揺れは県北。止まったのは首都圏まで
東北新幹線が福島‐白石蔵王間で脱線し、全線で運転が再開したのは約1か月後の4月14日、通常ダイヤに戻ったのは5月13日でした。停電は東京電力・東北電力管内の最大223万戸に及びました。地震で東北・東京エリアの火力発電所14基(約650万kW)が止まった影響が残るなか、寒さで需要が増えた3月21日には、国内ではじめての「電力需給ひっ迫警報」が東京電力管内に出され、翌22日には東北電力管内にも出されました。
福島の沖で揺れると、東京の電気が細る。自社の被害ゼロでも、電力、交通、取引先の経路で止まる構図の、教科書のような実例です。
そして原型 —— 2011年、立入りが止めた事業
原子力災害では、建物も設備も無事なまま、避難指示によって立入、操業、出荷、雇用が止まる事態が、広域で長期に続きました。事業の停止要因は「損壊」だけではありません。アクセス、人員、取引、需要のどれが欠けても、事業は止まります。福島はこれを全県規模で経験しました。この経験が、「復旧計画(元に戻す)」ではなく「継続計画(何を、どこで、どう続けるか)」の必要性を示しています。
2022年3月16日の深夜、多くの会社が同じ問いに直面しました。朝までに何を確認するか。誰が出社するか。取引先に何と言うか。13か月前にも、同じ揺れがありました。同じ問いに、前回より早く答えられた会社と、また白紙から考えた会社に分かれた。その差が、BCPです。
二つの読者へ
作った——15年前に。その計画は、いまの会社を守れるか
福島県のBCP策定済みは23.0%(帝国データバンク 福島県版・2026年7月24日公表・調査は2026年5月18〜31日)で、全国平均の21.4%を上回ります。3.11を経験した県として自然な数字です。しかし策定「率」の高さは、計画の「鮮度」を保証しません。
点検の問いは三つです。
2019年の水害基準。計画に「洪水」の章はありますか。3.11の直後に作った計画は、あの災害の形に偏りがちで、阿武隈川の洪水や会津の大雪が入っていないものが多い。
2022年の深夜基準。23時36分の発災で、安否確認、出社判断、翌朝の顧客連絡は計画どおり動きましたか。動かなかった箇所が、最良の改訂素材です。
名簿の鮮度基準。緊急連絡網、代替調達先、重要顧客リストの日付はいつですか。15年で、人も取引先も入れ替わっています。
既存の計画を見直すときは、BCP-AIの再生成機能で初版を作り直せます。福島には、検証の機会が15年分あります。
まだ作っていない会社へ
策定していない理由は、全国調査で「スキル」「人材」「時間」の不足が上位です。意識ではなく、資源の問題。福島には、次に挙げる相談先と制度があります。資源の問題には、資源で答えられる県です。
これだけ経験の多い県で白紙のままでいることは、取引先から見た信用の問題にもなりつつあります。帝国データバンクの2026年全国調査は、BCPの未整備が信用リスクになりうると指摘しています。取引、入札、金融の実務要件として、淡々と受け止めてください。
23.0%は回答企業群における割合であり、県内全企業の推計ではありません。
福島の支援先
事業継続力強化計画(ジギョケイ)。福島県内の累計認定は1,100件を超えています(令和8年7月末時点)。認定により、防災・減災投資の税制措置、補助金審査上の加点があります。
商工会・商工会議所・よろず支援拠点。作った初版を持って相談することもできます。
BCP-AIで作った初版があれば、相談の場で「何を直すか」から話を始められます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。
15年分の経験を、1枚の計画に。最初の草案は今日作れます。