2026年4月20日、群馬県は12年ぶりに計算し直した。結論——「地震は、県内のどの市町村でも起こり得る」
群馬県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
そして県内最大の完成車工場は、無傷のまま止まった。2019年10月のことだ。
2026年4月20日、群馬県は前回調査から12年ぶりとなる地震被害想定調査の結果を公表しました。学識経験者による検討委員会が、県内と周辺の活断層から被害の大きいものを選び、評価したものです。
対象は6つの地震です。深谷断層帯・綾瀬川断層、太田断層、片品川左岸断層、大久保断層、六日町断層帯、長野盆地西縁断層帯。最大の被害となる深谷断層帯・綾瀬川断層の地震では、冬の夕方・強風時の条件では、建物の全壊が約11万4,000棟、火災による焼失が約3万4,000棟と想定されました。
今回の想定の最大の特徴は、そこではありません。 活断層が確認されていない場所でも過去には地震が発生しているとして、県内の各市町村の直下でマグニチュード6.9の地震が発生する場合を計算したことです。県は「うちの市町村には断層がない」という逃げ道を、自ら先回りして塞ぎました。
津波は来ません。それは事実です。しかし、あなたの会社を止めるのは津波ではありません。揺れ、浸水、土砂、道路の寸断、雪、噴火、停電。そして、無傷のあなたの会社の、外側で起きる被災です。群馬の企業は、それを2019年と2018年に実際に経験しています。
始まりは「何から手を付けるか」ではありません。自社の住所で、何が、何日止まるかです。
群馬のリスクは「組み合わせ」で襲う
ブロック1: 地震 —— 「どこでも」が県の公式見解になった
想定された6つの地震は、深谷断層帯・綾瀬川断層(マグニチュード8.0)、太田断層(6.9)、片品川左岸断層(6.8)、大久保断層(7.0)、六日町断層帯(7.7)、長野盆地西縁断層帯(7.9)です(いずれも県の被害想定が設定した規模で、国の長期評価の値とは異なるものがあります)。
このうち大久保断層(桐生市・みどり市付近)は、今回の見直しで新たに評価対象に加わりました。国の長期評価に同断層が加わったことを受けたもので、県東部では、局地的に最大震度7が想定される地域があります。東毛の機械・繊維の集積の直下にあたります。
そして各市町村直下のマグニチュード6.9は、全市町村が対象です。事業所、倉庫、従業員の自宅、取引先の所在市町村ごとに読む必要があります。
想定の評価対象は、揺れ・液状化・土砂・火災にとどまりません。冬季の積雪、上下水道、電力、固定と携帯の通信、道路・鉄道、避難と帰宅困難、孤立集落、危険物、河川、複合災害、そして直接および間接の経済被害まで及びます。県自身が「オールハザードで、事業が止まる経路まで」計算しています。
自社で確認すること: 地震のあとに自社の工場が無事かを確認するだけでは足りません。水・電気・通信・道路・取引先のどれが何日止まると、どの製品・どの顧客・どの入金が止まるか。
ブロック2: 洪水・土砂 —— 「色が付いていない場所」でも起きた
令和元年東日本台風では、県南西部を中心に記録的な大雨となりました。利根川、石田川、早川、蛇川、桐生川、井野川、高田川、鏑川、烏川などが氾濫危険水位に達しています。県内でも住家の全半壊や浸水が多数生じました。
注目すべきは富岡市内匠です。当時は土砂災害警戒区域に指定されておらず、明瞭な地すべり地形もない、傾斜の緩やかな斜面で地すべりが発生しました。 富岡市内でも、記録的な雨量を観測しています。
| 実災害で起きたこと | 企業活動への読み替え | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 記録的降雨・河川水位の上昇 | 河川の近傍だけでなく、内水・道路・橋梁・通勤・配送が広域に影響を受ける | 事業所・倉庫・従業員宅・配送経路の浸水想定と通行止めを住所単位で確認 |
| 設備・在庫・車両の浸水 | 受変電設備、制御盤、原材料、製品、フォークリフト、配送車が止まる | 設備と在庫のかさ上げ、車両の事前移動、停止・再開・廃棄の手順 |
| 人と物の到達不能 | 出勤、仕入、納品、修理、顧客対応ができない | 休業・在宅・限定営業の基準、代替配送、取引先への連絡、優先業務の順序 |
| 顧客・取引先の被災 | 自社が無事でも検収・出荷・入金・需要が止まる | 顧客・仕入先・物流拠点の所在地、代替先、保管上限、資金繰り |
ハザードマップで色が付いていないことは、「起きない」という意味ではありません。 富岡市内匠で起きたのは、まさにそういう場所でした。
ブロック3: 火山と雪 —— 観光と北毛の操業条件
浅間山、草津白根山、日光白根山。県は浅間山の大規模噴火を想定した火山ハザードマップを公開しています。
2018年1月の本白根山の噴火は、有史以降はじめて本白根山で発生した噴火でした。火口近くのスキー場では、噴石により1人が亡くなり、11人が負傷しています。亡くなられた方に、心より哀悼の意を表します。事前の観測で兆候をとらえられなかった突発的な噴火であり、「警戒レベルが上がってから考える」では間に合わない場合があることを示しました。
北毛などの豪雪と凍結は、出勤の可否だけの問題ではありません。除雪、燃料、配送、荷役、来客、従業員の安全が、数日間の操業条件を左右します。
自社で確認すること: 噴火・降灰、豪雪・凍結、山間道路の雪崩と土砂。この3つで、操業を落とす基準と誰が決めるかを分けて書く。
ブロック4: 取引網 —— 製造業の県は「県外で」も止まる
製造業は、出荷額・従業者数とも群馬県経済の中核です。
自動車・輸送機械、機械、電気・電子、食品などの集積では、建物や設備だけでなく、部品、電力と水、道路・鉄道・高速道路、物流、品質の承認、そして県内外の取引先が再開の条件になります。首都圏、北関東、中京圏の被災が、群馬の会社の出荷と入金を止めます。
自社が無傷でも、群馬の会社は止まった
実話1: 県内最大の工場が、取引先の浸水で止まった
2019年10月、令和元年東日本台風が関東を通過しました。
太田市の完成車工場そのものに被害はありませんでした。 しかし一部の取引先の部品メーカーが浸水などの被害を受け、部品の調達に支障が生じる見込みとなりました。被災したのは2次取引先で、鋼をプレスして車体の構造部品の一部を作るメーカーです。
同社は10月16日15時15分の遅番勤務以降、太田市と大泉町にある工場の操業を停止しました(一部の工程を除く)。同社は被災した取引先に人的・物的な支援を実施し、復旧を後押ししました。操業の再開は10月25日でした。
この会社は、止まった取引先に人と物を送り込める企業です。あなたの会社は、止まった仕入先を支えられるでしょうか。 そして、あなたが止まったとき、発注元は待ってくれるでしょうか。
群馬の製造業の停止は、群馬の中で完結しません。
実話2: 温泉街に被害はなかった。それでもキャンセルが相次いだ
2018年1月23日の午前、草津白根山の本白根山で噴火が発生しました。温泉街は火口から約5キロ離れており、直接の被害はありませんでした。
それでも、不安を感じた宿泊予約客からの問い合わせとキャンセルが相次ぎます。旅館の組合が加盟施設に行った調査では、1月26日の夕方までに多数の宿泊がキャンセルされ、この時点での経済損失は数億円規模と推計されました。その後、噴火は発生せず、情報発信の効果もあって客足は戻っていきました。
施設が無事でも、顧客の不安、交通の停止、警戒情報が売上を止めます。噴火の翌日、安全であることをどこで、誰の名前で、どう伝えるか。予約の変更と返金をどう扱うか。数週間分の資金繰りをどうするか。それらは、噴火が起きてから考えることではありません。
群馬の「止まった」実話は、どちらも自社の建物が壊れていません。BCPを「建物が壊れたときの計画」だと思っているなら、群馬でこそ、書き直す価値があります。
二つの読者へ
まだ策定していない4割の会社へ
帝国データバンク群馬支店が2026年5月18日から31日に県内企業379社を対象に実施した調査(有効回答153社・回答率40.4%・2026年8月5日公表)によると、次のとおりです。
| 指標 | 群馬県(2026年) | 補足 |
|---|---|---|
| BCP策定率 | 17.6% | 前年から1.4ポイント減少 |
| 未策定 | 41.8% | 4割超(前年比1.9ポイント増) |
この数値は回答した153社における割合であり、県内全事業所の推計ではありません。
同じ2026年の全国調査では、BCP策定率は21.4%でした。全国が上向いた年に、群馬の数字は後退しています。
ただし、これは県内企業の意識の問題ではありません。帝国データバンクが挙げる理由は一貫して「スキル・ノウハウの不足」「人材や時間の確保が困難」であり、企業単独での対応に限界を感じるケースもあるとされています。やる気ではなく、手段の問題です。
手段の問題であれば、手段を変えれば解決します。
作ったが、動いていない会社へ
事業継続力強化計画(ジギョケイ)の累計認定は、県内で2,000件を超えています(令和8年7月末時点)。認定を取ったあと、訓練と更新は続いているでしょうか。
2026年4月20日、県は想定を12年ぶりに刷新しました。 あなたの計画が前提にしている被害想定は、2012年のものではありませんか。
県のオールハザードBCP様式で作った1枚も、住所・取引先の所在地・在庫日数が古ければ、その日には動きません。
群馬県の支援・制度
群馬県版オールハザードBCP(群馬県 地域企業支援課)は、地震・風水害・感染症・ブラックアウトなどをそれぞれ別の計画に分けるのではなく、サプライチェーンと物資の調達を含めた不測事態への対応を一つの計画で扱うフォーマットです。A3版2枚で、製造、卸小売、建設、宿泊、飲食、運輸など業種別の様式が用意されています。
まずは、県の様式で1枚書いてみてください。無料で、A3版2枚です。入口として、これ以上のものはありません。
問題はその先にあります。その1枚を動く計画にするには、事業所・倉庫・従業員宅・主要仕入先・通勤と配送の経路を住所単位でハザード情報と突き合わせ、品目別の在庫日数と代替先を埋め、想定や取引先が変わるたびに更新する必要があります。ここから先は、手作業で続けるのが難しい領域です。最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。
| 内容 | 参照先 |
|---|---|
| オールハザードBCP・業種別の手引き | 群馬県 地域企業支援課 |
| 地震被害想定 | 群馬県「群馬県地震被害想定調査」(2026年4月公表) |
| 洪水・土砂・地震・火山の住所別の確認 | 群馬県内ハザードマップ、市町村防災マップ、国土交通省ハザードマップポータル |
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
自社の住所で、何が、何日止まるか。そこから始める。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。