2026年4月20日16時55分、岩手県に津波警報。あの日、あなたの会社は何を決めましたか。
岩手県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2026年4月20日、午後4時52分。三陸沖でマグニチュード7.7の地震が発生しました。気象庁は数分後に岩手県沿岸へ津波警報を発表し、久慈港で約80cmの津波を観測。岩手県内では最大で約5万2,300人、北海道から福島県までの5道県では合わせて18万人以上に避難指示が出されました。警報は同日夜に解除されましたが、続いて「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表され、1週間の警戒が呼びかけられました。
三陸沖では2025年11月のM6.9、12月の青森県東方沖M7.5(後発地震注意情報が制度開始後はじめて発表された地震です)に続く地震活動で、6月25日には岩手県沖でM7.2の地震が起き、青森県で最大震度6強、県内でも最大震度5強。この1年半で、M6.9〜M7.7 の大きな地震が4回続いています。
あの夕方、沿岸の店も工場も港も、仕事を止めて高台へ向かいました。それは正しい。問題は、その後です。翌朝から営業を再開するか。後発地震注意情報の1週間をどう過ごすか。従業員と取引先にどう伝えるか。決めてあった会社と、その場で考えた会社の差は、もう出ています。決めていなかったとしても、それは責められることではありません。誰もが、はじめてでした。
県の被害想定では、日本海溝(三陸・日高沖)モデル(夏12時・発災直後)で断水26.4万人、停電の影響62.7万人、通信不通24.8万回線。次に来るのが「警報だけ」とは限りません。
「岩手は津波が危ない」では、内陸の会社は何も決められない
岩手は全国2位の面積に、三陸沿岸の海溝型地震・津波と、内陸・山間部の豪雨・雪・道路寸断という、別種のリスクを併せ持っています。県平均の危機感では、宮古の水産加工にも、北上の部品工場にも刺さりません。必要なのは、自社、倉庫、従業員の自宅、取引先の住所で「何が、どの順で止まるか」を確かめること。そしてこの1年半は、リスクが「水と揺れ」だけではないことも示しました。火は、乾いた冬の沿岸でも事業を止めます。
カード1: 津波 —— 「避難」と「その後の長期停止」を分ける
県の被害想定では、人的被害のほとんどは津波によるもので、早期避難の徹底が最大の変数とされています。想定は一定の条件による推計であり、将来の確定予測ではないことを、県自身が明記しています。
三陸沿岸では「揺れたら仕事より避難」が、すでに地域の作法として根づいています。2026年4月20日にそれが実際に機能したことは、県内の事業者が共有する事実です。このページはそれを前提に、「避難の次」を問います。断水、停電、通信、道路、港、取引先が戻る順番です。
市町村別の津波浸水想定(日本海溝・千島海溝の5断層モデル)で、自社の住所を確認してください。
カード2: 揺れ・断水・停電 —— 内陸も「無事な会社に水と電気が来ない」
日本海溝(三陸・日高沖)モデルでは、発災直後(夏12時)に断水26.4万人、停電の影響62.7万人、通信不通24.8万回線、冬18時の発災なら翌日の避難者5.4万人、直接の経済被害2.7兆円が想定されています。
2026年6月25日の岩手県沖M7.2(県内最大震度5強)では、沿岸北部から内陸北部にかけて強い揺れを観測しました。「揺れは沿岸だけ」という思い込みを外す、直近の実例です。
カード3: 台風・豪雨 —— 統計開始以来はじめての「東北太平洋側上陸」は岩手だった
2016年の台風10号は、1951年の統計開始以降ではじめて、東北地方の太平洋側(大船渡市付近)に上陸しました。宮古市と久慈市では1時間に80mmの猛烈な雨。岩泉町では小本川が氾濫し、すべての集落の孤立が解消するまで、およそ3週間を要しました。
山地が広い岩手では、雨の被害はまず「道路と孤立」として現れます。従業員の通勤路、配送路、仕入路を、1本ずつ確かめてください。
カード4: 火災・雪 —— 2025年、大船渡は市域の1割を焼いた
2025年2月26日に発生した大船渡市の林野火災は、焼失面積が約3,370ha(市の面積の約1割)で、1964年以降では国内最大の規模になりました。住家90棟を含む226棟の建物被害(うち全焼175棟)。記録的な乾燥と強風が重なりました。2026年4月には、大槌町でも大規模な林野火災が発生しています。
冬季は、豪雪と暴風雪による出勤不能、配送の遅延、燃料の制約が、毎年の前提になります。
「災害=地震と水」ではありません。乾燥注意報と強風の日に、山際の事業所、倉庫、資材置場がどうなるかまで含めて、リスクを住所で見てください。
ハザードマップ: 岩手県土砂災害警戒情報システム/国土交通省ハザードマップポータル/岩手県 津波浸水想定(市町村別図面)
岩手はこの1年半、「無傷でも止まる」を何度も経験した
警報と「注意情報」だけで止まった —— 2026年4月・6月
4月20日、県内の建物被害は限定的でした。それでも沿岸の店、工場、港は夕方から夜まで止まり、翌日からは後発地震注意情報の1週間。営業を続けるか、夜間の海側作業をどうするか、予約や納期の問い合わせにどう答えるかを、各社がその場で判断しました。6月25日の朝の地震(県内最大震度5強)でも、揺れの直後に安全確認と再開判断を迫られる構図は同じでした。
この情報は、今後も出ます。2022年12月に運用が始まった常設の制度で、すでに2回発表されています。次の1週間の過ごし方を決めてあるかどうかは、もう仮定の話ではありません。
道路1本、橋1本で3週間 —— 2016年台風10号
岩泉町では、建物が無事だった事業所も、すべての集落の孤立が解消するまでおよそ3週間、従業員も商品も燃料も動かせませんでした。断水は北海道・岩手を中心に最大1万6,600戸余りに及び、岩泉町では解消まで10月8日、発災から5週間以上を要しました。停電は県内4か所の水力発電所の浸水停止を伴いました。
岩泉町の乳業メーカーは、3つの工場すべてが浸水して操業を停止し、主力商品の販売再開まで約1年1か月を要しました。全国から支援が寄せられての復活でした。裏を返せば、主力設備を失った中小企業の復旧は、支援があっても年単位かかります。
復旧の速さは、被災の軽さではなく、事前の決めで差がつきます。代替の搬出路、在庫と燃料の日数、休業判断の基準を、雨が積み上がる前に。
三陸が学んだ連鎖 —— 冷蔵・燃料・港・市場が同時に止まる
東日本大震災津波で、県の農林水産関係の被害は総額6,633億円にのぼり、うち水産・漁港関係が5,649億円と約85%を占めました。
農業でも、停電で冷却が止まり、燃油不足で集荷できず、生乳や野菜を廃棄する事態が起きました。建物と農地が無事でも、電気、燃料、道路のどれか一つで、商品は失われます。
2025年の大船渡林野火災でも、同じ構造が再現されました。焼けたのは山だけではなく、作業場や倉庫など住家以外の建物136棟も失われ、なりわいが止まりました。
岩手の供給網は、沿岸の漁港・冷蔵・加工と、内陸の製造・農畜産・幹線物流が結びついています。自社の無事と事業の継続は別物です。BCPは「建物の計画」ではなく、「経路と取引先の計画」として作ります。
二つの問いかけ
経験なら、日本のどの県より積んだ。足りないのは計画だけだ
積みたくて積んだ経験ではありません。それでも、この15年で岩手の経営者が身につけたものは、どの県よりも重い。
帝国データバンクの岩手県内企業調査では、BCPを策定済みの企業は16.4%(2022年時点)。同社の2026年全国調査では策定率が21.4%で、岩手の「策定意向あり」は48.1%です(2026年5月調査。いずれも回答企業群の値で、県内全企業の推計ではありません)。経験の重さに対して、計画は追いついていません。
ただし、それは意識の問題ではありません。TDBは策定していない理由を「スキル・人材・時間」の不足に集約し、意識の問題ではなく経営資源の不足に起因する構造的な課題だと分析しています。岩手の中小企業は、震災からの再建、人口減、人手不足を、15年背負い続けてきました。「時間と人がない」は、事実として重い。
避難を最優先すること。冷蔵と燃料の持ち時間。道路と港が戻る順番。取引先が止まれば自社も止まること。三陸の経営者の頭の中には、すでに全部あります。最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。
その計画に、「後発地震注意情報の1週間」は書いてありますか
震災のあとに作ったBCPは、15年経って前提が変わっています。組織、取引先、雇用形態(在宅勤務、外国人材)、通信手段。そして制度そのもの。後発地震注意情報は2022年12月に運用が始まり、すでに2回発表されています。
4月20日の夜と6月25日の朝、その計画を開きましたか。開いて、使えましたか。使えなかった箇所こそ、更新すべき箇所です。
大船渡と大槌の林野火災のように、津波中心の想定に含まれないリスクが現実になっています。「津波BCP」を「複数リスクBCP」へ広げる見直しの入口になります。既存の計画を見直すときは、BCP-AIの再生成機能で初版を作り直せます。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)の岩手県内の累計認定は610件を超えています(令和8年7月末時点)。策定済みで未認定の会社は、見直しのついでに認定を。税制措置、金融支援、補助金審査上の加点などがあります。
岩手には、事業を立て直してきた15年分の蓄積がある
震災復興の局面で、県内の企業はグループ補助金をはじめとする各種の支援制度を広く活用してきました。そこで共有された経験則は単純です。制度は、事前の計画があるほど速く使える。罹災証明、被害額の算定、復旧計画の提出。どれも「平時に整理してある会社」が先に進みます。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)。県が制度を案内し、小規模事業者が同計画に基づいて行う防災・減災設備の整備を支援しています。防災・減災設備の税制措置、日本政策金融公庫の低利融資などの金融支援、各種補助金の審査上の加点。県内の累計認定は610件超です。
相談窓口の網。岩手県よろず支援拠点(いわて産業振興センター)、県内の商工会議所・商工会(盛岡、宮古、大船渡、釜石、久慈、北上、花巻、一関ほか)、岩手県中小企業団体中央会。県内各地に相談先があります。
金融。岩手県の制度融資(災害対策・経営安定関連)、日本政策金融公庫の防災・減災設備資金。
BCP-AIで作った初版を持って、商工会・商工会議所やよろず支援拠点に相談することもできます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
今日できるのは、草案を1本作ることだけです。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。作成した計画は、自社の実情と公的な防災情報に照らして確認し、必要に応じて修正してください。
次の警報の夜までに、初版を。