大雨特別警報の全国第1号は、京都を含む3府県に出た。あの朝、嵐山の旅館は水の中にあった。
京都府のBCP(事業継続計画)── 府内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2013年9月16日。日本で初めての大雨特別警報。
2013年9月16日未明、気象庁は、運用開始後、全国で初めての大雨特別警報を、京都府、滋賀県、福井県に発表しました。桂川は嵐山・渡月橋付近で堤防を越え、周辺の旅館や土産物店が浸水。京都市は市内各地に避難指示を出しました。
市内各所で浸水と土砂崩れが発生し、市営地下鉄東西線と京阪京津線は数日間運休しました。府北部では、由良川もあふれました。嵐山のある温泉旅館は、3連休の予約客に休業を告げるほかありませんでした。
被災したのは、建物だけではありません。予約、交通、仕入れ、従業員の足、そして「京都に行く」という需要そのものが止まりました。
あなたの計画は、建物以外の停止まで書かれていますか。
京都のリスク
京都は二つあります。都市、観光、大学の京都市域と、由良川、雪、舞鶴港の府北部では、止まる経路が違います。
カード1: 地震 —— 観光客と学生がいる時間に揺れたら
直下型地震と南海トラフによる揺れ。事業所と設備の被害に加えて、京都に固有の重みは「滞在人口」です。多くの観光客と学生が、常に府内にいます。発災の時刻によっては、従業員より先に、来訪者と学生の安全確保と帰宅困難への対応が必要になります。
府内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。府内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 京都盆地-奈良盆地断層帯 南部区間(マグニチュード7.4程度)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、府の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る琵琶湖西岸断層帯 北部区間は滋賀県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「京都府の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
自社で確認すること: 事業所、倉庫、従業員の自宅、取引先の所在地の想定震度(府・市町村のハザードマップ)。設備の固定。来訪者の避難誘導と、多言語での連絡。
カード2: 洪水・内水・土砂 —— 桂川と由良川、二つの水害
京都市域では、桂川、鴨川、宇治川と市街地の内水。2013年の台風18号では、桂川が嵐山で越水し、市街地でも浸水が発生しました。
府北部では、由良川が2013年、2014年、2018年と繰り返し水があふれています。勾配の緩やかな川で水が引きにくく、福知山、舞鶴、綾部の市街地と道路が浸水域にかかります。2018年の7月豪雨では、府内で5人の方が亡くなりました(消防庁とりまとめ・2019年4月1日現在)。心より哀悼の意を表します。
自社で確認すること: 河川、内水、土砂のハザードと、浸水の継続時間。床の高さ、設備、在庫、車両の位置。主経路と代替経路。
カード3: 府北部の雪・道路・港 —— 冬は物流が細くなる
府北部と山間部では、雪と凍結が道路、配送、出勤、燃料を制約します。舞鶴港、国道27号と175号、鉄道(舞鶴線、山陰本線、京都丹後鉄道)は細い動脈で、2013年の台風18号の際も広範囲で同時に止まりました。
自社で確認すること: 冬季の在庫と燃料の積み増し。配送を中止する基準。代替経路(京都縦貫道、国道9号側)と、孤立したときの人員計画。
カード4: 都市機能・観光・大学 —— 需要と足が同時に止まる
2018年の台風21号では、京都市で観測史上有数の暴風となりました。府内では延べ約17万軒が停電し(関西電力・9月14日時点の集計)、鉄道、決済、予約、宿泊が同時に乱れました。
同じ台風で関西空港が閉鎖されたように、府外のインフラの停止が、京都の訪日客需要を直撃する構造もあります。
自社で確認すること: 停電時の決済、予約、冷蔵。来訪者、学生、従業員の帰宅困難への対応。休業と再開の判断基準と、告知の手段。
ハザードマップ: きょうと危機管理WEB 防災資料室/桂川・由良川の洪水浸水想定区域図(府北部は浸水継続時間まで確認)
自社が無傷でも止まる —— 2018年、京都は2度止まった
7月、平成30年7月豪雨
京都府に大雨特別警報。記録的な大雨で由良川と桂川があふれました。府内で床上浸水544棟、床下浸水1,760棟(消防庁とりまとめ・2019年4月1日現在)。福知山市大江町では天然ダムが形成され、避難勧告が出されました。府北部の道路、鉄道、集荷が止まりました。
9月、台風21号
京都市で観測史上有数の暴風。府内では延べ約17万軒が停電し、復旧まで日数を要した地域もありました。文化財の被害も相次ぎ、伝統行事の中止が続きました。京都府は、中小企業向けの「災害対策緊急資金」融資と復興支援の補助制度を発動しました。融資と補助が実際に動いた前例のある府、ということです。
需要の蒸発
建物が無事だった宿や店でも、報道、交通、空港の停止で、予約のキャンセルが続きました。製造業では、停電、部材、京阪神の物流の停止が。大学と研究では、実験、データ、学生の足が止まりました。
「お客様が来られない」「電気が来ない」「北部の道が使えない」。自社の敷地の外で起こる停止を、あなたのBCPは想定していますか。
二つの読者へ
特別警報の第1号から10年余り。次の第1号級が来る前に、計画は形になっていますか
帝国データバンク京都支店の2026年調査では、京都府内の策定率は21.9%、策定意向は52.3%です。全国調査(2026年)の意向は50.5%です。約半数が「作りたいのに、作れていない」。
策定していない理由は、全国調査で「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%。危機感ではなく、資源の問題です。
京都には、府と経済団体による京都BCP推進会議とセミナーがすでにあります。相談先はある。最初の一枚を作る道具が、なかっただけです。
帝国データバンクの調査は回答企業群の値であり、府内全事業所の推計ではありません。
計画はある会社へ
その計画に、来訪者と学生は登場しますか。 従業員の安否だけで終わっていませんか。多言語対応、帰宅困難、キャンセルと返金の手順まで、ありますか。
京都市の計画を、府北部の拠点にそのまま使っていませんか。 由良川流域は繰り返し浸水しています。北部の拠点には、浸水継続時間、雪、代替経路という、別の想定が要ります。
延べ17万軒が停電した2018年9月、決済と予約は動きましたか。 2018年に実際に起きたことで、点検してください。
京都の相談先・支援制度
京都府「BCPの策定について」/京都BCP推進会議。府と商工会議所連合会、商工会連合会、経済同友会、工業会、中央会などが共同で、BCP策定支援セミナーを継続的に開催しています。モデルプランと簡易版の策定シートがあります。
きょうと危機管理WEB 防災資料室。地震、洪水、土砂の被害想定とハザード情報を一括で確認できる、府の入口です。「まず自社のリスクを見る」最初の1時間に。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)。京都府内の累計認定は1,700件を超えています(令和8年7月末時点)。税制措置、金融支援、補助金審査上の加点などがあります。
災害時の資金。2018年の台風21号では、府の「災害対策緊急資金」融資と復興支援の補助制度が実際に発動されました。現行の制度は府の金融課のページで確認できます。
策定を独力で進める必要はありません。京都府よろず支援拠点、京都産業21、そして府内各地の商工会議所・商工会が、相談の窓口として機能しています。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
特別警報の第1号は、京都を含む3府県でした。次の第1号を待たずに、最初の一歩を今日。
観光も、ものづくりも、北部の物流も。最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。