2022年3月16日、23時36分。震災から11年後の深夜、宮城はもう一度試された。

宮城県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

2022年3月16日、午後11時36分。福島県沖でマグニチュード7.4の地震が発生し、宮城県の登米市と蔵王町で震度6強を観測しました。東北新幹線は白石蔵王駅の手前で脱線し、全線の再開まで長い時間を要しました。東京電力・東北電力の管内で最大223万戸が停電。岩手、宮城、福島、埼玉、千葉で最大約7万戸が断水しました。仙台市に本社を置く大手メーカーは翌朝、県内3工場の稼働を一時停止しました。

東日本大震災から11年。宮城の企業は、どの県よりも「備えの理由」を知っていました。それでもこの夜に試されたのは、建物の強度ではありません。深夜の発災で誰が判断するか。新幹線が止まる間、どう動くか。計画が「いま」動くか。

経験は、15年前の計画のままでは動きません。

あの夜、動く計画はありましたか。

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宮城県固有の災害リスク

数値はいずれも県の第五次地震被害想定調査(令和5年11月最終報告)などの一次資料によるもので、季節や時刻の条件付きの想定です。

カード1: 地震 —— 県が4つのシナリオで計算済み

宮城県は2023年(令和5年)11月、東日本大震災後では初となる第五次地震被害想定調査の最終報告を公表しました。250mメッシュで地表震度、液状化危険度、津波浸水深、建物被害、ライフライン被害を計算し、GISデータをオープンデータとして公開しています。

県が想定した4つの地震は次のとおりです。

条件が最悪の場合の県内の死者数は、東北地方太平洋沖地震で約5,500人、長町‐利府線断層帯地震で約1,100人、スラブ内地震で約750人と想定されています。国が実施した日本海溝モデル(M9.1・切迫性が高いとされる)では約8,500人です。

実務への読み替えはこうです。「震災クラスはしばらく来ない」は、半分しか正しくありません。震度7を出しうるスラブ内地震は、国の評価で発生可能性が高い。2022年の夜の、より強い版が、最有力のシナリオとして県自身に計算されています。そしてデータは公開済みです。自社の事業所、倉庫、従業員の自宅、取引先を住所単位で震度・液状化・浸水深に重ねていないのは、自社だけかもしれません。

2026年4月20日には三陸沖でマグニチュード7.7の地震があり、県北部で長周期地震動階級3を観測し、仙台港などに津波が到達しました。県内に被害の報告はありませんでした。

カード2: 津波 —— 「何分後か」まで県が公表している

第五次想定の津波計算(最大クラス・代表地点)では、気仙沼市は地震発生から5分で水位の変化が始まり最大約21.7m、石巻市は4分で約18.7m、仙台市は13分で約10.3mです。

防潮堤の整備により、比較的頻度の高い津波への安全度は大きく向上しました。一方で最大クラスの津波は防潮堤を超える。避難行動が前提、というのが県の結論です。

沿岸の事業所、倉庫、港湾関連の拠点は、「浸水深」だけでなく「猶予時間」で、避難・安全停止・データ保全の手順を設計してください。

カード3: 東日本大震災 —— 沿岸だけの災害ではなかった

発災後、県内では多くの人が長期の避難を強いられました。沿岸の津波被害に加え、内陸部でも電気、ガス、上下水道の停止と、道路・公共交通の分断が起き、直接被災しなかった企業も止まりました。東日本大震災で亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。

港湾、漁港、冷蔵、燃料、市場、取引先が同時に止まる「停止の連鎖」は、水産・食品・製造・物流が集積する宮城の産業構造を、そのまま直撃しました。

カード4: 豪雨・雪・広域物流 —— 地震以外でも止まる

令和元年台風19号では、丸森町などで大きな被害が出ました。河川、内水、土砂のハザード確認は、地震とは別建てで必要です。冬季の雪と凍結は、県北部と内陸の道路、配送、出勤を止めます。

仙台塩釜港(仙台港区・石巻港区)、そして道路と鉄道は、県内外の取引網の結節点です。自社が無傷でも、港・道路・市場のどれかが止まれば、重要業務は止まります。

自社が無傷でも、事業は止まる

AIで生成したイメージ画像。水を張った田んぼの向こうに並ぶ工場と海。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

2022年3月16日の夜。建物が無事だった企業にも、翌朝から次のことが起きました。新幹線の長期運休による通勤・出張・来客の停止。停電による製造・冷蔵・決済の停止。取引先の工場——県内の生活用品工場、東北の半導体・サーバー工場など——の停止による、部材と出荷の停止。震度6強は登米市と蔵王町でしたが、影響は県内全域から首都圏まで及びました。

県自身の想定は、これを裏づけます。スラブ内地震の直後には、県内の73%が停電し、都市ガスの95%が止まる。建物の耐震化が進んだいま、宮城の事業停止の主戦場は「倒壊」ではありません。電気、水、ガス、通信、交通が数日から数週間戻らない状態で、何を、どの順で、誰が動かすか。そこに移っています。

東日本大震災のときも、沿岸被災の陰で、内陸の企業は電気、ガス、水道、道路、燃料、顧客の停止で操業を止めました。仙台港区と石巻港区の機能停止は、原材料、燃料、出荷のすべてに波及しました。

宮城のBCPは、「建物と人命」だけでは足りません。電源・水・通信の継続時間、代替輸送と代替港、優先顧客と再開条件。そこまで書いて、はじめてこの県の停止パターンに対応できます。

二つの読者へ

計画はある。最後に動かしたのは、いつですか

県の令和7年度調査では、従業員30人以上の事業所の策定済みが半数近くに増えました。策定中を含めれば、6割が策定に取り組んでいます。回答した事業所の値であり、県内全事業所の推計ではありません。

数字は右肩上がりです。しかし震災から15年余り。策定を主導した世代は退職し、訓練は年中行事になっていませんか。2022年3月の深夜、計画どおりに動けた企業とそうでない企業を分けたのは、紙の有無ではなく、更新と訓練の有無でした。

そして県の想定は更新されました。15年前に書いた計画は、震度7のスラブ内地震も、停電73%も知りません。

経験はある。計画だけが、まだない

県調査は、従業員30人以上の事業所を対象としたものです。全規模を対象とする帝国データバンクの全国調査(2026年6月25日公表・調査は2026年5月18〜31日)では、全国のBCP策定率は21.4%。策定していない理由の上位は「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%、「時間を確保できない」28.1%です。いずれも回答企業群の値であり、全事業所の推計ではありません。

震災を経験した県で、「必要性の説得」は要りません。止まっているのは意識ではなく、着手のコストです。必要なのは、着手コストを下げる道具です。

県の令和7年度調査(30人以上事業所)、TDB全国21.4%(全規模・別定義)、事業継続力強化計画の県内累計認定1,300件超(令和8年7月末時点・国制度の利用実績)は、母集団も定義も異なる別の指標です。並べて「宮城は進んでいる/遅れている」と単純化しないでください。

宮城県の支援・参照先

みやぎ企業BCP策定ガイドライン(宮城県)。東日本大震災における県内企業の経験と教訓をもとに作成されました。本文と「みやぎモデル1〜3」の3様式があり、Wordで直接入力できます。初めての企業はモデル1から。被災県自身が作った、入口の低い公式ツールです。

宮城県中小企業等BCP・事業継続力強化計画実践支援補助金。BCPや事業継続力強化計画の実践に必要な設備・備蓄品などの導入を補助する県の制度です。事業継続力強化計画の認定が要件になります。(募集の時期と条件は年度により異なります)

事業継続力強化計画(ジギョケイ)。経済産業大臣が認定。税制措置、金融支援(日本政策金融公庫の低利融資)、補助金審査上の加点があります。仙台商工会議所が策定サポートを行っています。

宮城県第五次地震被害想定調査。最終報告書とGISデータが県のオープンデータポータルで公開されています。仙台市は地震ハザードマップとして整備済みです。

港湾BCP(東北地方整備局)。仙台塩釜港などの広域連携の枠組みです。

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

AIで生成したイメージ画像。夜の高架橋の下に灯りのともる倉庫と白いバン。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

いまの計画は、第五次想定を知っていますか。作り直しも、ここから。

宮城の震度・液状化・津波データと、あなたの住所を重ねるところから。

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経験を、次の一晩のために。