あの日、南海トラフ地震臨時情報のきっかけになった地震の震源は、宮崎の海だった。——あの夏から。
宮崎県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2024年8月8日16時43分、日向灘の深さ約30キロでマグニチュード7.1の地震が発生しました。日南市で震度6弱。宮崎市、串間市、都城市で震度5強。宮崎港で0.5メートル、油津で0.4メートルの津波を観測しています。
この地震を受けて、気象庁は同じ日の19時15分、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。1週間、「特別な注意」の呼びかけが続きました。その起点は、宮崎の目の前の海でした。翌2025年1月にも日向灘で地震が続き、臨時情報(調査中)が再び発表されています。
揺れと津波から命を守るのが第一です。その次に来るのが「会社をどう続けるか」で、それを決めておく文書がBCPです。しかしTDBの調査に回答した県内企業では、持っている企業は6社に1社にとどまります。
宮崎のリスクは「揺れ・津波・台風・港」の四段構え
1. 南海トラフ —— 想定は「県平均」ではなく「自社の住所」で見る
最大クラスの想定は、死者約1万5,000人、全壊・焼失約8万2,000棟、避難者は最大で約43万4,000人、断水約95万4,000人、停電約57万4,000軒です(2026年2月公表)。繰り返しますが、これは最大クラスの想定であり、特定の地点の予測ではありません。
一方で、日向灘では2024年8月と2025年1月に、マグニチュード6.6から7.1の地震が現に続いています。想定は遠い将来の話ではありません。
自社で確認すること: 県の平均ではなく、自社の住所での震度・浸水深・津波の到達時間。
2. 台風は「同じ番号」で2度、宮崎を止めた
2005年の台風14号では、期間降水量が1,300ミリを超えました。東九州道の法面が崩壊し、国道10号の橋台が洗掘され、延岡港の消波ブロックが崩壊しています。
2022年の台風14号では、宮崎市・都城市・三股町に大雨特別警報が出ました。県内で土砂災害が17件発生し、JR吉都線・日南線で路盤が流出しました。宮崎県工業用水道が給水制限に入り、受水していた企業の操業が止まっています(解除後に順次再開)。
台風で止まるのは、道路、鉄道、港、水です。
自社で確認すること: 台風が近づいたとき、どの段階で操業を落とすか。その判断を誰がするか。
3. 電気と水が止まると、宮崎の主力産業は時間との勝負になる
宮崎の食料品製造業は出荷額4,154億円(全業種の22.9%)、従業者1万3,774人(全業種の25.3%)です。畜産・酪農では、停電がそのまま搾乳・冷却・給水の停止を意味します。許容できる時間は「日」ではなく「時間」の単位です。
自社で確認すること: 停電したとき、何時間で何が損なわれるか。非常用電源は、その時間をまかなえるか。
4. 港とフェリーの県 —— 道路が無事でも、海側で止まる
重要港湾3港が県内貨物の約95%を扱い、宮崎港だけで約66%を占めます。港湾取扱量約1,171万トンのうち、内国フェリーが約608万トン(2024年)。半分を超えています。
代替は「別ルート」では済みません。別の港、荷役、受入先、顧客の検収まででワンセットです。
自社で確認すること: フェリーが欠航したとき、どの港へ、どう運ぶか。受入先と検収の段取りまで決まっているか。
自社が無傷でも、宮崎の会社は止まる
届かない
2022年の台風14号では、山間部の道路とJR線が同時に切れました。従業員も、原材料も、修理業者も到達できません。2005年には高速道路と国道10号が同時に損傷しています。山間に立地する会社ほど、「建物は無傷、道路は全滅」が現実に起きます。
出せない
県内貨物の半分はフェリーで動きます。フェリーは、被害が出る前に欠航します。宮崎では「被災ゼロでも出荷停止」が起こりえます。飼料や燃料の入荷側も同じです。
水が来ない
2022年は工業用水の給水制限で、受水していた企業の操業が止まりました。自社の給水系統がどこから来ているかを知らない会社は、止まる理由を一つ多く抱えています。
2024年8月8日の夕方、会社には同じ問いが突きつけられました。明日、営業するのか。従業員を出社させるのか。取引先に何と言うのか。
答えを紙にしておくのがBCPです。揺れてから考えるには遅すぎる問いばかりが並んでいます。
二つの読者へ
まだ作っていない会社へ
TDBの調査では、県内企業のBCP策定済みは16.7%でした(2026年8月17日発表・前年比+1.4ポイント)。未策定は43.1%です。全国は21.4%です。
この16.7%は、県内226社を対象に72社が回答した値です。県内全企業の推計ではありません。
未策定の理由は、全国調査の上位が「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%。意識の問題ではなく、資源の問題です。 最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。
作ったが動いていない会社へ
2024年8月、臨時情報が出ていた1週間。計画を開いて動けたでしょうか。
呼びかけが終了する8月15日まで何を続け、何を再開するか。それを決めていた計画は、どれだけあったでしょうか。臨時情報は「被害ゼロの災害対応」を要求します。避難の基準、休業の基準、顧客への連絡。この3つだけでも、次の臨時情報が出る前に1枚に更新しておいてください。
宮崎の支援先
宮崎県版BCPひな形は、業種別の「宮崎県版BCPひな形」と、簡易版・業種共通の「宮崎県版BCPひな形ライト」が無償で提供されています。BCP-AIで作った初版を、県のひな形へ転記し整合させる下敷きにできます。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)は国の認定制度で、宮崎県の累計認定は940件を超えています(令和8年8月末時点)。税制措置や補助金審査上の加点があります。
BCP-AIで作った初版を持って、県のひな形の相談先や商工会議所に相談することもできます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
次の臨時情報が出る前に、初版を。——前回の震源は、宮崎の海だった。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。