10年で2度。震源は熊本、止まったのは大分の商売だった。
大分県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
令和8年熊本地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
2016年4月、熊本地震。大分県でも由布市・別府市で震度6弱を観測しました。宿の大半は営業を続けています。それでも、県全体で約20万人分の宿泊予約がキャンセルされました(2016年5月2日時点)。
建物は使えるのに、客が来ない。 大分の観光は「被害なき停止」を、このとき経験しました。
2026年7月28日、令和8年熊本地震(最大震度7)。大分県内の最大震度は4で、県内の建物被害はありませんでした。それでも別府・由布を中心に、宿泊のキャンセルが書き入れ時のお盆を直撃します。
県旅館ホテル生活衛生同業組合の調査では、8月12日の時点で回答125施設・7,810人泊・損失は約1億5,600万円。県全体の推計は6万人泊超・約12億円とされています(いずれも現時点の推計です)。
同じ震源域、同じ止まり方が、10年を置いて繰り返されました。建物が無事でも、自分の県が震源でなくても、事業は止まります。
一度目は「想定外」でした。二度目を経験した今、三度目への備えは、経営判断として選べます。
大分県のリスク
南海トラフ地震・津波
県の想定では、南海トラフの巨大地震が夏の12時に起き、早期避難率が低い場合、最大で20,077人の方が亡くなるとされています。
最大の津波高は、佐伯市蒲江丸市尾浦で13.59メートル、蒲江新町で11.00メートル、大分市佐賀関西町で8.33メートル、別府市北的ケ浜町で5.50メートル。いずれも条件付きの推計です。
自社で確認すること: 沿岸の事業所・倉庫の津波到達時間と、避難を開始する基準。
中央構造線断層帯 —— 「想定」ではなく、既に一度揺れている
大分市・別府市で建物と人的被害が大きくなる想定です。そして2016年の熊本地震では、実際に由布市・別府市で震度6弱を観測しました。
県内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 周防灘断層帯 主部区間(マグニチュード7.6程度。海域・沿岸に分布)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る菊川断層帯 中部区間は山口県に位置するため除いています。同じ表に載る日奈久断層帯 日奈久区間・八代海区間は熊本県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「大分県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
自社で確認すること: 事業所と従業員宅が断層帯とどう重なるか。住所単位で。
豪雨・土砂 —— 2017年九州北部豪雨
日田市を中心に、全壊48棟、半壊266棟、床上浸水148棟、床下浸水843棟の被害が出ました。最大で2地区・約545人が孤立しています。日田観測所では24時間降水量が観測史上1位を更新しました。
自社で確認すること: 孤立が数日続いた場合の在庫日数と代替経路。
火山
鶴見岳・伽藍岳、九重山に火山防災協議会があります。別府・由布・九重の観光と道路に、補助的なリスクとして効きます。
被害がなくても、止まる
大分は「無被害停止」の実例を3系統持っています。
1. 隣県の地震で観光が止まる —— 2度の実体験
2016年、由布・別府は震度6弱で自らも揺れましたが、宿の大半は営業を続けました。それでも、県全体で約20万人分の宿泊予約がキャンセルされています(2016年5月2日時点)。
2026年は震度4で、県内の建物被害はありませんでした。それでもお盆の商戦に、県推計で6万人泊超・約12億円のキャンセルが出ています(現時点の推計)。
「営業できます」を、いつ・誰が・どの経路で顧客に届けるか。 キャンセル料、返金、延泊、再予約の判断を誰が持つか。この設計があるかどうかで、同じ地震でも損失を小さくする余地が生まれます。
2. 道路が切れて内陸が止まる —— 2017年九州北部豪雨
日田市では最大約545人が孤立しました。商工労働関係だけで390か所・7.09億円の被害。土木関係は6,798か所・299.84億円にのぼります。水害は、農業と公共土木だけの問題ではありません。
2017年7月の九州北部豪雨では、小野地区の地すべりで県道が被災しました。花月川橋梁が流失したJR久大線は、運転再開まで約1年を要しています。人・部品・観光客・燃料が動けない期間を、在庫日数と代替経路で設計してください。
3. 用役が切れて臨海が止まる —— 大分港・臨海工業地帯
大分港は取扱貨物量が全国11位・九州2位です(令和4年)。鉄鋼・石油化学・電力が集積し、鉄鉱石・石炭・原油を輸移入しています。
港、岸壁、電力、工業用水、道路。このどれか一つの停止が、一工場を超えて県内外の製造・エネルギー・物流・顧客へ連鎖します。自社の耐震化だけでは守れない停止経路です。
大分だけの答えの先例
半導体の集積(県のリーディング産業)では、東日本大震災と熊本地震を教訓に、2023年9月時点で会員27社が災害時の相互協力に合意しています。設備・部品・技術者・情報を、単独で抱えず企業間で融通するという考え方です。
「単独復旧の限界」への、県内での実装例です。
二つの読者へ
まだ計画がない会社へ
計画の有無は、被害の大きさではなく、止まった後の再開の速さに現れます。2026年の夏、大分の観光がそれを見ました。
数字は3つの層に分かれます。混同しないでください。
| 何の数字か | 大分県の値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 事業継続力強化計画の累計認定 | 1,000件を超える(令和8年7月末時点) | 国の制度に認定された件数。策定率ではありません |
| BCP策定意向あり | 47.3% | 策定済み・策定中・検討中の合計です |
| 県独自の策定済み率 | 同一条件の公開値なし | 推測値は掲載しません |
まだ多数派が持っていません。始めるなら、横並びを待つ必要はありません。
何から書くかは、地域によって違います。沿岸なら津波避難。観光ならキャンセル対応と再開の広報。内陸なら道路分断時の在庫日数。臨海なら用役停止時の安全な停止手順。最初の1枚が、地域ごとに違います。
計画はあるが、動くか不安な会社へ
その計画に、「隣の県が震源のとき」のページはありますか。
3つ、点検してみてください。
- 自社は無傷で、顧客が不安になっているとき。発信の手順はありますか(2016年と2026年の実例)。
- 仕入先・顧客・港・道路の停止を想定していますか。
- 一社で完結する計画になっていませんか。半導体の27社は、「単独復旧では間に合わない」という結論をすでに出しています。
県のBCPモデルには「グループ対応型」があります。単独の計画からの更新に使えます。
地域の支援・相談先
大分県BCPモデルは、自然災害対応型・感染症対応型・グループ対応型の3モデルを県が無償で提供しています。グループ対応型があること自体が、「連携型BCP」を県が推している証拠です。
おおいたLSIクラスターには、複数の会員企業が参加する災害時の相互協力の枠組みがあります。半導体・電子部品系の事業者は、まず業界内の枠組みを確認してください。
事業継続力強化計画は国の認定制度で、県内の累計認定は1,000件を超えています(令和8年7月末時点)。防災・減災投資の税制・金融支援に加え、取引先への説明にも使えます。
商工会・商工会議所・よろず支援拠点は、県内各地にある地域別の伴走先です。
BCP-AIで作った初版を持って、県のBCPモデルの様式や商工団体に相談することもできます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
一社で守り切れないことは、大分の半導体27社がもう証明した。だから、まず自社の1枚目を。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。