「災害が少ない県」に、日本で最初の特別警報が出た。
滋賀県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
気象庁が大雨特別警報の運用を始めて18日目の早朝。運用開始後はじめての大雨特別警報は、2013年9月16日、京都府・福井県とともに滋賀県に発表されました。月曜、祝日の午前5時5分のことです。
県内では住宅が壊れ、道路が止まりました。復旧までに1年2か月を要した鉄道もあります。「災害が少ない」と言われてきた県だからこそ、計画の空白は大きくなります。
最初の草案づくりは、今日から始められます。
滋賀県のリスク
1. 2013年台風18号 —— 第1号の朝、県内で何が起きたか
9月15日から16日にかけての総雨量は、高島市朽木平良で494.5ミリ、甲賀市土山で364.5ミリを記録しました。県内では住家が全壊10戸、半壊279戸。床上浸水49棟、床下浸水497棟。栗東市では土砂災害で住家4棟が全壊しました。
交通とインフラへの影響は広域に及びました。県内には、橋梁の流失などで被災し、復旧までに1年2か月を要した鉄道もあります。
この災害が示したことは3つあります。浸水は湖岸・低地・内水という「住所」で決まること。地域のインフラは復旧が年単位になり得ること。そして、自社の建物が無事でも、通勤経路・配送経路・取引先が同じ雨で止まること。
2026年7月7日に甲賀市で発生した土砂崩れにより、甲賀市に災害救助法が適用されました。
この土砂崩れで被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
自社で確認すること: 事業所の住所を、県の「地先の安全度マップ」で引く。通勤経路と配送経路も同じ地図に重ねる。
2. 地震 —— 琵琶湖西岸断層帯は、人口と事業所の真下にある
琵琶湖西岸断層帯の北部区間はマグニチュード7.3程度で、地震調査研究推進本部は主な活断層の中で発生確率が高い「S*ランク」と評価しています(2026年1月1日時点)。県の被害想定は、断層帯全体が連動するマグニチュード7.8を想定しています。
県の被害想定(2014年3月公表)の最大ケース、南部から破壊が始まるケース2・冬の深夜では、死者2,182人、建物全壊38,504棟、半壊83,856棟とされています。県内の広い範囲で震度6強以上の揺れが想定されています。なお、南海トラフ地震(陸側ケース・冬の深夜)では死者474人が想定されています。
事業継続に直結するのは、ここから先の数字です。同じケース2で、地震直後の停電率は63%、断水率は49%。1週間後もなお、約53万人(断水率38%)が断水しています。 避難者は1週間後で約25万人。「揺れの3分」ではなく「水と電気のない数週間」を計画する必要があります。
琵琶湖西岸断層帯では、1185年にも南部の活動と考えられる地震が起きています。県内では1662年にも、別の断層帯(三方断層帯・花折断層帯北部)で大きな地震が起きています。
震度6強以上の帯は、県南部と重なります。事業所も、従業員も、国道1号・名神・琵琶湖線も、そこに集中しています。
県内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 浦底-柳ヶ瀬山断層帯(マグニチュード7.4程度)
- 琵琶湖西岸断層帯 北部区間(同7.3程度)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る養老-桑名-四日市断層帯 北部区間・中部区間・伊勢湾断層帯 南部(白子-野間区間)は三重県、京都盆地-奈良盆地断層帯 南部区間は京都府・奈良県、六甲・淡路島断層帯 六甲山地南縁-淡路島東岸区間は兵庫県、池田山断層は岐阜県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「滋賀県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
自社で確認すること: 耐震、設備の固定、安否確認、そして再起動の条件。県平均ではなく、自社の住所で。
3. 南海トラフ —— 震源から遠い県でも、これだけ止まる
県の被害想定(2014年3月公表・陸側ケース)では、県内は広く震度6弱から6強。冬の深夜で建物全壊11,017棟、半壊74,084棟とされています。
特筆すべきはライフラインです。地震直後の停電率は88%、断水率は52%。断水率は1日後には68%まで上がります。 停電が続く影響で、給水が止まる範囲が広がるためです。
震源から離れた滋賀でも、電気と水は「西日本全体の被災」の影響を受けて止まります。そして県内が比較的軽微であっても、京阪神と中京の顧客・仕入先は甚大被害圏にあります。
自社で確認すること: 南海トラフは滋賀にとって二重のリスクです。自社の被災と、取引網の被災。どちらも別々に見積もってください。
4. 雪と広域交通 —— 通り道の県は、通り道ごと止まる
湖北と湖西には、豪雪地帯対策特別措置法に基づく豪雪地帯の指定を受けた地域があります。そして米原の周辺は、東海道新幹線、在来線、名神、北陸道が集まる日本の東西交通の結節点にあたります。
冬季には大雪となることがあり、関ケ原から米原にかけての新幹線の遅延や幹線道路の規制が起きます。それは県内企業の出荷、通勤、納期に直結します。京阪神と中京の双方と結ばれた取引網は平時の強みですが、災害時にはどちら側の被災でも県内企業が止まる、双方向の依存になります。
自社で確認すること: 冬季の在庫と燃料。配送や移動を中止する基準。主経路と代替経路(名神・新名神・北陸道・湖西道路)の地図化。
無傷でも止まる —— 「工場の県」×「通り道の県」
県経済の4割超が、ものづくり
県内総生産に占める製造業の割合は44.0%で、全国1位です(2021年度県民経済計算)。第2次産業の割合も全国1位で、家電・精密・化学・医薬品などのマザー工場が集積しています。
製造業は、電気・水・部材・物流・顧客工場のどれか一つが欠けても止まります。県経済の構造上、一つの工場の停止が、県外や海外の供給網の停止に直結します。
立地の強みは、そのまま停止経路になる
滋賀に工場が集まった理由として語られるのは、琵琶湖の豊富な水、京阪神・中京への交通の利便、そして災害の少なさ。この3点です。
災害時には、この3点がそのまま急所になります。水系(洪水・内水・渇水)、幹線交通(名神・新名神・国道1号と8号・琵琶湖線・新幹線)、そして「災害が少ない」ゆえの備えの薄さ。2013年の特別警報第1号は、「少ない」が「来ない」ではないことの実例でした。
どちらの都市圏が止まっても、滋賀は止まる
京阪神と中京の中間にある滋賀の取引網は、双方向です。仕入先、顧客、物流拠点、従業員の居住地が県外にまたがる企業は、自社が無傷でも隣府県の災害で操業が止まります。南海トラフの想定は、その最大形です。
建物の無事と、事業の継続は、別の問題です。
自社で確認すること: 取引先の所在地、在庫日数、代替の調達と輸送、優先する顧客、検収と入金。これを一枚の表にしてください。
二つの読者へ
まだ作っていない会社へ —— 「災害が少ない県」で計画がないのは、自然なことでした。これまでは
帝国データバンクの滋賀県版調査(2025年7月7日公表・県内の有効回答96社)では、BCP策定済みが19.8%、策定の意向がある企業が50.0%でした。2026年の全国調査(帝国データバンク・2026年6月25日公表・調査は2026年5月18〜31日)の都道府県別では、滋賀の「策定意向あり」は48.0%です。関心は半数、実行は2割。 ここに意向と行動のギャップがあります。滋賀県の数値はいずれも回答企業の割合であり、県内全企業の推計ではありません。
なお、2025年の県調査と2026年の全国調査は時点も対象も異なります。増減として読まないでください。
近畿の2026年調査(帝国データバンク 近畿地区版・2026年7月9日公表・調査は2026年5月18〜31日・有効回答1,603社)では、BCP策定率は20.5%でした。
全国調査(2026年)を規模別に見ると、大企業のBCP策定率が39.9%であるのに対し、中小企業は18.3%で、20ポイント以上の差で推移しています。作れない理由は「スキル・ノウハウがない」「人材を確保できない」「時間を確保できない」の3つ。TDB自身が、意識ではなく経営資源の構造問題だと分析しています。
同じ調査には、滋賀の金属プレス製品製造業から、策定を進めるハードルの高さを訴える声も掲載されています。
最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。
作ったきりになっている会社へ —— その計画、祝日の早朝5時5分に、開けますか
特別警報の第1号が出たのは、月曜・敬老の日の午前5時5分でした。連休中の早朝に、誰が招集を判断し、誰が全社員へ連絡するのか。計画の有無より、その朝に使えたかどうかが問われます。
琵琶湖線と名神が同時に止まる朝、出荷と出勤の判断を誰がしますか。取引先の工場が2週間止まるとき、どの顧客とどの工程を優先しますか。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)の県内認定は、累計901件です(令和8年7月末日時点)。製造業の県として、取引先からの要請、補助金審査上の加点、税制措置と接続した「制度を知って使う」余地が大きく残っています。
地元の支援と併走する
2026年7月7日の甲賀市の土砂崩れで被害を受けた方へ。滋賀県の案内をご確認ください。
滋賀県の「事業継続計画(BCP)策定支援事業」は、入門編の「滋賀県版BCPモデル」というひな形と、中小企業庁の指針・基本コースに準拠した「策定運用の手引き」を提供しています。製造業用の手引きがあるのは、工場の県らしい導線です。
県はサイバーリスクに備えるBCPセミナーも開催しています。申込の情報は商工会・商工会議所と共有され、支援機関の伴走につながる設計になっています。
地先の安全度マップは、水害リスクを宅地単位で示すものです。滋賀県は流域治水条例を定め、これを整備してきました。県には住所単位のリスク情報がすでにあります。それを自社の計画に翻訳するのが、次の一歩です。
判断の基準を事前に決めておけば、滋賀県防災ポータルと滋賀県土木防災情報システム(雨量・水位・土砂・道路規制)の画面で、その基準を切り替えるだけになります。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)は国の認定制度です。商工会・商工会議所を経由した申請の支援があります。
BCP-AIは、県や商工会議所の支援と競合しません。初版を作ってから支援機関に相談する、という使い方ができます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
「災害が少ない県」を信じるより、「備えた会社」になる。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。