津波の到達、最短1分。——2026年3月、和歌山県が公表した新しい想定だ。
和歌山県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2026年3月25日、和歌山県は約10年ぶりに南海トラフ巨大地震の地震動予測と津波浸水想定を見直して公表しました。串本町では、紀伊大島の一部への1メートル津波の到達が前回想定より2分早い最短1分。市街地へは5分です。
1分で判断できるのは、事前に決めてあったことだけです。誰が避難を号令するか。設備をどう止めるか。翌日からの連絡、給与、取引先への対応をどうするか。揺れてから開く計画に、意味はありません。
県内企業でBCPを策定済みなのは16.7%(2025年5月調査)。全国平均の21.4%(2026年5月調査)を下回っています。
このページは、和歌山で事業を営むあなたが、南海トラフ・津波・豪雨・道路寸断のどれが来ても「人が生き残り、事業が戻ってくる」ための最初の一歩を、今日中に踏み出すためのものです。
| 数字 | 内容 |
|---|---|
| 最短1分 | 1メートル津波の到達(串本町 紀伊大島の一部・2026年県想定) |
| 16.7% | 県内企業のBCP策定済み(2025年5月調査。全国平均21.4%は2026年5月調査) |
和歌山のリスクは「県平均」では語れない
和歌山は一つではありません。沿岸(津波・高潮・港湾)、紀伊山地(深層崩壊・道路寸断・孤立)、紀北の都市部(中央構造線・物流)。事業が止まる経路が、まったく違います。あなたの住所のカードから読んでください。
カード1: 地震・津波(沿岸全域)
2026年3月に公表された県の新想定は、最大クラスの南海トラフ巨大地震と、発生頻度の高い東海・東南海・南海3連動地震の2本立てです。一部の市町村では、最大津波高が上がり、到達時間が短くなりました。
串本町では、1メートル津波が紀伊大島の一部で最短1分、市街地で5分。旧想定で17メートル級だった串本町の最大津波高は、2026年の新想定で18メートル(町内の最大値)になりました。津波災害警戒区域は、海南市から新宮市まで沿岸19市町に指定されています。
自社で確認すること: 事業所、倉庫、従業員の自宅、避難先を住所単位で重ねる。そのうえで、避難開始の号令者、夜間・休日の代行者、顧客や宿泊客の誘導を紙1枚で先に決める。設備の安全停止は、避難と両立する範囲だけにとどめる。
カード2: 豪雨・土砂・道路寸断(紀伊山地・県南部)
2011年の紀伊半島大水害では、記録的な大雨が続きました。深層崩壊と土石流が多発し、県内各地で土砂災害と道路の寸断が相次ぎ、集落の孤立も生じました。
この災害では、県内で56人が亡くなり、5人の方が行方不明となりました。亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。
建物が無事でも、従業員・配送・燃料・修理・顧客への「到達可能性」が失われます。復旧は、電気より道路が遅い。
自社で確認すること: 主経路と代替経路の地図化。危険時に移動を中止する基準。在宅・休業・代替配送への切替条件。燃料・水・在庫の日数。
カード3: 台風・高潮・停電(沿岸・市街地)
和歌山は台風の常襲地です。2026年6月には台風6号が県南部に上陸しました。統計開始以来でも早い時期の上陸で、「シーズン前」という考え方が消えつつあります。
停電・断水・通信障害が浸水や強風と重なると、冷蔵・決済・予約・連絡が同時に止まります。
自社で確認すること: 設備・在庫・車両のかさ上げと固定。停電時の温度管理、衛生、決済の代替手段。休業と再開の基準。
カード4: 自社が無傷でも止まる(全県共通)
港湾、道路、市場、取引先、観光需要。このどれか一つが止まれば、重要業務は止まります。次のセクションで、和歌山が実際に経験した二つの止まり方を見てください。
和歌山は「二つの止まり方」を両方経験した
山側の停止 —— 2011年紀伊半島大水害
2011年9月、台風12号による記録的な豪雨で、県南部を中心に大きな被害が出ました。多くの住家が被害を受けています。
事業の視点で残った教訓は、建物より先に、道路と通信が消えるということです。深層崩壊と土石流で経路が寸断され、従業員も配送も修理も燃料も届かない期間が続きました。この災害は、のちに特別警報が導入される契機になっています。
当時、あなたの会社は何日止まりましたか。次に同じ雨が降ったとき、その日数は縮んでいますか。
需要側の停止 —— 2024年8月の南海トラフ臨時情報
2024年8月8日、日向灘の地震を受けて、臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。和歌山県内に地震の被害は、ほぼありませんでした。
それでも白浜町は白良浜など全ての海水浴場を閉鎖し、花火大会も中止になりました。8月という年間最大の書き入れ時にキャンセルが相次ぎ、海水浴場の閉鎖や宿泊の取り消しなど、需要側の影響が広がりました。串本町役場では、職員が泊まり込みで対応にあたりました。
被害ゼロでも、情報だけで需要と売上は止まります。 しかも臨時情報は、今後も出ます。発表されたら自社はどうするか。営業継続の判断基準、予約とキャンセルへの対応、従業員の勤務。それを決めてある会社と、その場で慌てる会社に分かれた、臨時情報が続いた期間でした。
山側の停止も、需要側の停止も、共通する対策は同じです。「起きてから考える」のをやめること。津波が最短1分で届く県では、それ以外の選択肢がありません。
数字で見る和歌山の現在地
まだ計画がない会社へ —— 「やるつもり」の56.4%と、「やった」の16.7%
和歌山県内企業のBCP策定済みは16.7%でした(帝国データバンク 近畿地区・2025年5月調査・和歌山県の回答企業78社)。全国平均は21.4%です(帝国データバンク・2026年5月調査)。この2つは調査年次が異なります。 単純な差として読まず、和歌山が全国平均を下回る水準にあるという傾向として見てください。
和歌山県の数値は各年の回答企業の割合であり、県内全企業の推計ではありません(2025年調査は78社)。
一方、2026年の全国調査の都道府県別で、和歌山の「策定意向あり」(策定済み・策定中・検討中の合計)は56.4%(帝国データバンク・2026年6月25日公表・調査は2026年5月18〜31日)。全国の50.5%を上回り、全国9位です。
意識は高いのに、紙になっていない。 この差は、和歌山の経営者の問題ではなく、着手の壁の高さを示しています。
全国調査で未策定の理由の上位は「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%、「時間を確保できない」28.1%。危機感の問題ではなく、道具の問題です。
BCPは、大規模な計画から始める必要はありません。避難の号令者、安否確認、連絡網、在庫日数。この紙1枚から始められます。最短1分で届く津波を前に必要なのは、完璧な計画ではなく、今日決める最初の数項目です。
計画はあるが動かない会社へ
2024年8月の臨時情報では、計画の有無ではなく「臨時情報の項目が計画にあるか」が分かれ目になりました。あなたのBCPに、「巨大地震注意が出たら」のページはありますか。
2026年3月の県の新想定で、津波の到達時間と浸水範囲の前提が10年ぶりに変わりました。2013年から2014年の旧想定にもとづく計画は、前提の更新が必要です。
確認するのは3点です。新想定での自社住所の浸水と到達時間を確認したか。臨時情報が出たときの営業・予約・勤務の判断基準があるか。道路が寸断されて従業員が来られない場合の運用を、訓練したか。
和歌山で使える支援と制度
事業継続力強化計画(ジギョケイ)は国の認定制度です。和歌山県内の累計認定は800件を超えています(令和8年7月末時点)。認定を受けると、税制措置、金融支援、補助金審査上の加点などがあります。単独型と連携型があり、まずは単独型からで十分です。
和歌山県は、BCPと事業継続力強化計画の案内ページを設け、策定を大規模地震等への有効な手段と位置づけています。
商工会議所・よろず支援拠点は、策定に伴走する窓口です。和歌山県よろず支援拠点と、県内各地の商工会議所があります。
使う順番は、新想定で自社の住所を確認し、紙1枚の初動を決め、ジギョケイを申請し、訓練で回す。制度は目的ではなく、通過点です。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
1分で動ける会社は、今日それを紙に書いた会社です。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。